会社を経営していると、必ず「人」をどう確保するかという壁にぶつかります。
中途採用で即戦力を取るか、他社から経験者を引き抜くか、それとも新卒を採用してゼロから育てるか。どの道も簡単ではありませんが、私自身の経験から言えば、新卒採用こそが最も骨が折れる、けれど一番報われる道です。
新卒採用は非効率?それでもやる価値がある
新卒を採用すると、正直大変です。
社会経験も浅く、ビジネスマナーから技術まで一から教えなければなりません。教育に時間を割けば、短期的には生産性が下がります。経営者仲間から「そんな非効率なこと、よくやるね」と言われたこともあります。
でも、私は思うんです。
人を奪って組織を回すのか、自分で人を育てて組織を築くのか。
この違いが10年後、20年後に大きな差になる、と。
新卒を育てることの意義
1. 文化を一から染み込ませられる
新卒は真っ白なキャンバスのようなものです。だからこそ、自社の理念や価値観をまっすぐに吸収してくれる。中途採用者のように前職のクセが邪魔をすることが少ない。これは組織にとって大きな強みです。
2. 定着率が高い
新卒から育てると「自分はこの会社に育ててもらった」という意識が芽生えます。その感覚は人を会社に縛るのではなく、自然と「この場所で頑張ろう」と思わせる力を持っている。長期的な戦力になってくれる確率が高いんです。
3. 社会と業界への責任
特に私たちのような美容サロン業界では、新卒を受け入れ育てることが社会的な役割でもあります。若い人に成長の場を与えることは、業界全体を支える行為ですし、その責任から逃げる経営は長続きしないと感じています。
もちろんリスクも大きい
ここまで聞くと良いことばかりのようですが、経営者としての本音を言えば、リスクも現実的に大きいです。
- 教育コストがかかる。時間も人件費も、かなりの投資になる。
- 辞めてしまうリスク。数年育てても「やっぱり向いてません」と言われたら、経営者としては頭を抱える。
- 即戦力にはならない。忙しい時に「いますぐ売上を作ってほしい」と思っても、それは望めません。
このリスクを受け入れる覚悟がなければ、新卒採用はただの「経費の塊」に終わってしまいます。
バランスの取り方
じゃあどうすればいいのか。
私が実践しているのは、長期投資と短期安定のバランスを取ることです。
- 最低限の中途採用で今の戦力を補強しつつ、新卒は未来への投資として採用する。
- 教育は「余った時間でやるもの」ではなく、仕組みに組み込む。営業時間中でも練習や研修を位置づける。
- 辞めさせない工夫として、キャリアの見通しをきちんと示す。
これを徹底しないと、新卒採用は「やっても意味がなかった」となりがちです。
サロン経営の現場から
サロン経営において、新卒採用は特に価値があります。
美容業界は人材不足が常態化しています。その中で、新卒を受け入れて育てることは「人を奪わない」姿勢の象徴です。
私自身、新卒から育てたスタッフが今ではお客様から信頼され、後輩を指導する立場になっています。その姿を見るたびに「やっぱり新卒採用は裏切らない」と実感します。育成にかかった時間とコストは、確実に未来へと還元されるのです。
まとめ
新卒採用はリスクが大きく、経営効率だけで見れば「やらない方が得」かもしれません。
けれど、それでは業界も会社も未来を失います。
人を奪うのではなく、人を育てる。
正道の経営を選ぶ以上、新卒採用は避けて通れない道です。短期的には非効率でも、長期的には必ず会社を強くし、信頼される組織を築きます。
経営の現場で日々感じているのは、「効率よりも信念を選んだ経営は、結果的に強い」ということ。新卒採用はその最たる実践です。