世の中の経営者像と自分の立ち位置

マインド

経営の世界に身を置くと、否応なく「経営者像」というものと比較される機会が増えます。
メディアに登場するカリスマ的な創業者、大企業を率いるリーダー、急成長ベンチャーの若手社長――世の中はさまざまな経営者像であふれています。そして往々にして、私たち中小企業の経営者はその姿と自分を比べ、「自分はあそこまでの規模ではない」とか「影響力が足りない」と感じることもあります。

しかし、ここで重要なのは「世の中が描く経営者像に自分を合わせる必要はない」ということです。むしろ、数ある経営者像の中で、自分がどの立ち位置を選び、どんな役割を果たすかを明確にすることこそ、長期的な経営の安定につながります。


経営者像はなぜ歪められるのか

まず押さえておきたいのは、世の中の経営者像が必ずしも正確ではないということです。
テレビやネット記事に登場する経営者は、基本的に「注目される存在」です。つまり、規模や成長スピード、話題性に偏って報じられる傾向があります。そのため「経営者とは大企業を率い、急拡大を果たす人物」というイメージが先行してしまうのです。

ところが、実際の経営者の大多数は中小企業や個人事業のリーダーであり、従業員数十人規模の会社を堅実に守り育てる人たちです。日本における企業の99%以上は中小企業であり、そこで雇用を守り地域社会を支えているのもまた経営者です。つまり「大きな会社をつくること」が唯一の正解ではないのです。


規模ではなく「役割」で立ち位置を決める

自分の立ち位置を考えるとき、会社の規模だけを基準にすると見失いやすくなります。
重要なのは「自分の経営が誰にどんな価値を提供しているか」という役割視点です。

例えば、大都市で全国展開する企業でなくても、地域に根ざしたサロン経営であれば「地域に暮らす人々に安心と魅力を提供する存在」という役割を持っています。あるいは、美容業界において新卒を育成する場を設けているなら「人材を輩出し、業界を支える存在」としての立ち位置もあるのです。

このように、規模で自分を卑下するのではなく「自分が果たしている役割」を意識することで、唯一無二の立ち位置を確立することができます。


正道経営者の立ち位置とは

「正道経営」を選んだ経営者の立ち位置は、短期的な数字で勝負するリーダーとは異なります。

  • 急成長する企業と比べると地味に見える
  • メディアで取り上げられることは少ない
  • 目立った話題性はない

それでも、時間が経つにつれて「安定している」「安心して任せられる」という評価が積み重なっていきます。

正道経営者の強みは「信用を基盤にした立ち位置」を築けることです。派手さはなくとも、10年、20年と会社を存続させ、社員を守り、顧客から選ばれ続ける。その姿勢自体がブランドとなり、他社とは違う存在感を放つのです。


他人の土俵で戦わない

経営者はしばしば「比較の罠」に陥ります。
同業他社の成長スピード、同年代の起業家の知名度、大企業経営者の華やかさ――そうした他人の土俵に乗ると、どうしても自分の弱みが際立って見えてしまいます。

しかし、本来の経営とは「自分の土俵」で戦うものです。
小規模でも「顧客からの厚い信頼」という軸で評価されれば、それは大企業の経営者にも真似できない強みになります。他人の尺度に惑わされず、自分の立ち位置を明確に持ち続けることこそ、正道経営の基盤を守る姿勢です。


自分の立ち位置を磨く3つの実践

  1. 理念を言語化する
    経営判断の基準となる理念を明確にし、社員・顧客・取引先に一貫して示す。
  2. 数字以外の成果を記録する
    売上や利益だけでなく、「顧客の声」「社員の成長」「地域貢献」など、信頼を可視化する指標を意識する。
  3. 比較対象を自分にする
    他社ではなく「去年の自社」「昨日の自分」と比較して成長を確認する。

まとめ

世の中にはさまざまな経営者像がありますが、そこに自分を無理やり当てはめる必要はありません。
重要なのは「自分が果たすべき役割を理解し、その立ち位置を磨き続けること」です。

正道経営を選んだ経営者の立ち位置は、派手さよりも信頼に根ざしています。だからこそ、一時的に注目を浴びる経営者よりも、長期的に価値を持ち続ける存在になれるのです。

自分の土俵を持ち、立ち位置を明確にして進むこと。それが、正道経営者としての誇りであり、未来を切り開く原動力となります。

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